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ファブリー病とは

歴史

ファブリー病は、1898年に、イギリスのWilliam AndersonとドイツのJohann Fabryの二人の皮膚科医によって、個別に報告がなされ、広汎性体幹角化血管腫、Morbus Fabry、Anderson-Fabry病としても知られています。

図1:Fabry 先生の写真

ファブリー病とは

ファブリー病は、30種以上あるライソゾーム病の一つであり、遺伝性疾患です。

ファブリー病の患者さんは、ライソゾーム内の加水分解酵素であるα-ガラクトシダーゼA(α-GAL)が生まれつき不足あるいは欠損しているため、この酵素で分解されるはずのスフィンゴ糖脂質が分解されずに血管内壁に蓄積することにより、組織や臓器の機能が障害を受けます。

ファブリー病の症状は多岐にわたるため、診断が困難な場合があります。症状が出てくるのは、小児期あるいは青年期が一般的とされていますが、しばしば症状の誤認や見過ごされるケースがあります。そのため残念ながら、成人になってようやく正しい診断が確定されることも多く、診断された時にはすでに病状が進行しており、主要臓器の機能低下や機能不全に至っていることがあります。

遺伝形式

ファブリー病の遺伝形式はX連鎖性劣性遺伝と呼ばれるものです。ファブリー病の遺伝子変異はX染色体に存在しているため「X連鎖」と呼ばれます。

父親がファブリー病の場合

その娘はすべて保因者となります。

母親が保因者の場合

妊娠ごとに50%の確率でファブリー病の遺伝子を子どもに受け継ぎます。ファブリー病遺伝子を受け継いだ息子はファブリー病を発症し、娘は保因者となります。

発症頻度

今日、ファブリー病の推定発生頻度は、欧米男性において、およそ4万人に1人と報告されていますが、明確な頻度は不明です。

症状

ライソゾームの中にある分解酵素α-GAL が分解する相手がスフィンゴ糖脂質だと説明しましたが、そのスフィンゴ糖脂質のひとつであるグロボトリアオシルセラミド(GL-3)は血管内皮細胞(血管内壁を構成している細胞)をはじめ、全身の細胞に蓄積します。ファブリー病になると分解ができなくなるので、さまざまな症状が出現し、時間の経過とともに悪化します。

主な症状を下記に示しますが、これらの症状はかなり個人差があります。ファブリー病の患者さんが皆、すべて同じ症状をもち、同じような経過をたどるわけではありません。症状は疾患の進行によって変化します。また、以下に記載された症状が出ない場合もあります。

四肢疼痛

主に手先や足先に、強く焼けるような、発作的な疼痛が生じ、数分から数時間持続します。これは、精神的ストレス、気温の変化、あるいは疲労によって、しばしば引き起こされます。

また、手先や足先に持続的な感覚異常(感覚が鈍くなる、しびれる、ちくちくするなど)が起こることがあります。

聴覚低下、耳鳴り

内耳神経にGL-3が蓄積することにより、耳が聞こえにくくなったり、耳鳴りが生じることがあります。

低・無汗症

発汗機能が障害されるため、汗をかきにくくなり、体温調節ができないことにより、暑さ、寒さに対する適応が困難となります。

被角血管腫

赤紫色の発疹が、胸部、腹部、臀部、陰部、大腿部などに出現します。
痛みやかゆみはないと言われています。

角膜混濁

外観的には確認が困難ですが、スリットランプ検査という方法で、角膜に渦巻き状の混濁が確認されます。これは視力には影響ないと言われています。

胃腸障害

食後の腹痛や下痢、嘔気・嘔吐など、さまざまな胃腸障害が生じることがあります。このため十分な栄養が摂取できず、体重が減少してしまう患者さんもいます。

主な臓器障害
各臓器のいろいろな細胞にGL-3が進行性に蓄積することで、さまざまな障害が起こります。

腎機能障害:尿中のタンパク量が増加し、腎機能が徐々に悪化し、最終的には腎不全となり、血液透析や腎移植が必要になる場合があります。

心機能障害:心肥大や心筋梗塞、弁膜異常不整脈などを起こします。ペースメーカーの挿入や心臓バイパス手術が必要になる場合もあります。

脳血管障害:脳梗塞や脳出血を起こし、記憶障害や発語障害、運動麻痺などが起こる場合があります。

精神障害:ファブリー病患者さんの中にはうつ症状を経験する方もいます。

QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)の低下:ファブリー病によるさまざまな症状のため、QOLが低下する患者さんがいらっしゃいます。学業や仕事が満足に出来ないほど、症状が悪化することもあります。

ファブリー病の進行

一般的には、幼少期から四肢疼痛の症状が出現し、徐々にその他にもいろいろな症状が出現し、悪化していきます。症状の悪化とともにQOLが低下します。

ファブリー病の病型

古典型

典型的なファブリー病を指し、前述した症状がほとんど全て出現します。α-ガラクトシダーゼAの酵素の働きはほとんどありません。

亜型

発症年齢が遅く、症状が一部に限られる場合を亜型と呼んで、古典型と区別しています。そのうち心ファブリー病が主に心臓に症状が現れ、腎ファブリー病は主に腎臓に症状が現れます。亜型の患者さんは古典型の患者さんに比べて、ごくわずかながらα-ガラクトシダーゼAの酵素の働きをもつと言われています。

ヘテロ接合体(女性患者)

ヘテロ接合体では、重い症状を示す人から、ほとんど症状を示さない人までさまざまです。しかし、最近の調査の結果、ヘテロ接合体の女性の場合でも年齢が進むと、多くの人に何らかの症状が出ると言われており、十分な経過観察が必要です。



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